かてぃん(角野隼斗さん)のピアノコンサートへ行った。③ ~インベンション第1番~

ピアノ


かてぃん(角野隼斗さん)のピアノコンサートへ行った。② ~アップライトピアノ~ からの続き。

去年から待ちに待った、Cateen かてぃんこと角野隼斗氏の、全国ツアー 2023 “Reimagine”

感動しまくりで、行って本当によかった。
これまで味わったことのない、豊かで贅沢な時間を知ったのだ。


演目は以下のとおり。

J.S.バッハ:インベンション 第1番 ハ長調 BWV 772
 ラモー:新クラヴサン組曲集 第2番(第5組曲)雌鶏、未開人
 グルダ:プレリュードとフーガ 変ホ短調
 角野隼斗:追憶
 J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ BWV 147
 J.S.バッハ:パルティータ 第2番 ハ短調 BWV 826
  Ⅰ. Sinfonia Ⅱ. Allemande Ⅲ. Courante Ⅳ. Sarabande Ⅴ. Rondeau Ⅵ. Capriccio
________

 角野隼斗:胎動
 角野隼斗:Human Universe
 カプースチン:8つの演奏会用エチュード 作品40
  Ⅰ. プレリュード
  Ⅱ. 夢
  Ⅲ. トッカティーナ
 J.S.バッハ:インベンション 第13番 イ短調
 カプースチン:8つの演奏会用エチュード 作品40 
  Ⅳ. 思い出
  Ⅴ. 冗談
 J.S.バッハ:インベンション 第4番 ニ短調
 カプースチン:8つの演奏会用エチュード 作品40
  Ⅵ. パストラール
 J.S.バッハ:インベンション 第14番 変ロ長調
 カプースチン:8つの演奏会用エチュード 作品40
  Ⅶ. 間奏曲
  Ⅷ. フィナーレ

角野隼斗 Hayato Sumino Official Websiteより

プログラム(パンフレットより)

で、衝撃だったのが、プログラムにバッハのインベンションが入っていること。
衝撃というよりは、はじめ知った時、ちょっとがっかりしたぐらい。

だって、ピアノ習ったことある方ならよくご存知だと思うけれど、バッハのインベンションて、
どっちかっつーと初心者向けの難易度の低い練習用曲集なのだ。
2ページほどのほんの短い曲が1番から15番まで全部で15曲。
自分も小学生の頃に一通りやって、一応全部〇をもらった。
そんな簡単な曲をコンサートで弾くピアニストなんているの?
「えーー、インベンション⁇ 手抜きかよ。」
なーんて最初思ってたんだが、これが大間違い。

インベンションがあんなに素敵とは。あんなにカッコイイとは。
自分が弾くインベンションとは大違いだったのだ。

自分は今でこそバッハが大好きだけれど、習っていた小学生の頃は、あまり好きではなかった。
バッハの曲って、すごい難しいわけではないのに、何となく弾きにくい、のだ。
バッハ独特のバロック調のメロディもそんなに好きになれなかった(今は大好き)。
それよりも、モーツァルトやベートヴェンのソナチネの方が、弾いていてずっと楽しかった。
しかしインベンションはピアノ教室の課程にあるのだから、やらないわけにいかない。

これは自分が習っていた時に使っていた楽譜。


先生が指摘箇所を色々書き込んでくれてある。
「暗」というのは「暗譜」の意味。
インベンションに限らず、ツェルニーやソナチネ、ソナタなど、
ある程度レベルアップしてくると、曲の仕上げに必ず「暗譜」をさせられる。
この「暗譜」をクリアして初めて〇がもらえて、次の曲に進めるのだ。

「インベンション 第1番」。
小学校何年生ごろ習ったのか正確にはすぐ思い出せないが、自分の人生初バッハ。
暗譜もこなして無事に〇をもらえた。

実は、コロナ禍でピアノを再開した時、自分のミスタッチのあまりの多さに愕然とし、
どうしたものかと考え、難易度の低い曲をおさらいしようと決めた。
そこで、自分で選んだ楽譜がこのバッハのインベンションだったのだ。

目標は「ノーミスで暗譜」。この第1番では、なんとかクリアできた。
しかし、難なくできたわけじゃなく、まさかの苦戦を強いられたのだ。
まず、なかなかノーミスができなかった。
2ページほどの短い曲なのに、必ず1箇所、2箇所、間違えてしまうのだ。
それでもまあ、繰り返し練習してなんとかノーミスに。次は暗譜。
この暗譜にまたもや苦戦。どうしても途中でわからなくなってしまって、終わりまで弾けない。
あれ、自分こんなに暗譜苦手じゃなかったはずなのに。
「暗」て楽譜に書いてあって〇をもらってるんだから、ちゃんと出来てたはずなのに。
やっぱ、加齢による脳の衰えなのだろうか。
それでも何度も何度も楽譜を見ずに弾いて、やっと暗譜が完了して、自分で自分に〇をくれた。

曲の何度を下げればノーミスできて、自信もつくかと思って始めたインベンションのおさらい。
それがこんなに手こずってしまうなんて。
自信をつけるどころか、逆に凹む結果に。
で結局、第1番に続いてインベンション第2番の練習を始めたが、
これもノーミスに時間がかかり、暗譜に進めないまま、情けないことに途中で放棄したのだ。
あれ、なんかかてぃんの演奏じゃなくて、自分のピアノ練習の話になっちゃったな。

話をかてぃんに戻そう。
そのインベンションを、あのかてぃんがコンサートでアップライトピアノでやってくれるとは。
もしかして、私のため?とすら思えてきた。(←なわけない)

コンサートの第1曲目は、インベンション 第1番から始まった。
これは特にジャズ風のアレンジはされていなかったと思う。
まずグランドピアノで弾いて、続いてアップライトピアノに移動しての演奏。
楽譜の冒頭の上の方にAllegro(アレグロ)という速度記号があるが、これは「速く」という意味。
速度記号というのは、演奏者によって捉え方が微妙に違ってくる。
同じAllegroでも、より速めに弾く人もいれば、それほどでもない人も。
YouTubeに色んな演奏家の方が、ご自身の演奏の動画をアップされているけれど、
やはりそれぞれ弾く速さが微妙に違う。
自分は、より速めに弾く方が好きだしカッコイイと思ったので、そうしていた。
しかし、かてぃんの演奏は意外にも、ゆっくり目だった印象だ。

しょっぱなのグランドピアノでの演奏は、ゆったりと静かな感じに聴こえた。
楽譜の冒頭の、「f」(フォルテ)の記号。フォルテは「強く」の意味。
アレグロでフォルテなんだから、元気よく軽快な出だしになる、と自分では解釈して、
そういう風に弾くようにしていた。
しかし、かてぃん氏の演奏は、テンポがそんなに速くなく、
しっとりと静かな感じに始まった気がした。
へー、こんな風に弾くのもアリなんだ、と、ちょっと意外な表現を新鮮に感じたのだ。

続いて、アップライトピアノでも、同じインベンション第1番の演奏。
まるで弱音ペダルでも踏んでいるかのような、
なんというか、あまり響かない、こもる感じの音色だった。
それがなんとも心地よく、癒される気がした。

かてぃん氏と言えば、アップテンポでダイナミックでゴージャスな演奏、
というイメージが勝手にあったので、コンサートのしょっぱなにこんな演奏をされると、
鼻息荒く待ち構えていた出鼻をくじかれ、クールダウンするしかない。
しかし思えば、最初にこの演奏があってこそ、
このツアーでかてぃん氏が創ろうとした世界観に、
すーっと自然に惹き込まれていくことが出来たように思う。

なんというか、有名になった一流ピアニストが、
ピアノを習い始めた頃を想って、一人部屋で、懐かしい練習曲を弾いているかのような、
そんな素朴で味わい深い演奏だった。

「こんな弾き方もあるんですよ、別にゆっくりでもいいんですよ、
 アップライトピアノでもいいんですよ(^-^)」
かてぃん氏の演奏からは、何となくそんなメッセージが伝わってきた気がした。
まるで私のために選曲してくれたかのように(←なわけない)。

インベンションの演奏は、この第1番の他、
コンサートの後半で、第13番、第4番、第14番、の演奏があった。
ちょっと長くなってしまったので、これについては、また別の記事で書きたいと思う。

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